2023年4月号
ニューストピックス
■商標のファストトラック審査は3月末で休止(特許庁)
■権利者不明の著作物の二次利用を促進(著作権法改正案)
■知的財産侵害品、個人向けの輸入差止が増加(財務省)
●商標のファストトラック審査は3月末で休止(特許庁)
特許庁は、商標の「ファストトラック審査」について、令和4年度末(令和5年3月31日)をもって休止すると発表しました。
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/fast/shohyo_fast.html
ファストトラック審査は、早期審査の一種で、所定の要件を満たす商標登録出願について、早期(出願から約6か月)に最初の審査結果通知を得られる制度です。近年、特許庁の商標登録出願の審査スピードが上がっており、通常審査であっても「出願から6か月以内」に審査結果が出されるケースが多くなっています。このため、ファストトラック審査のメリットが少なくなり、制度を休止することになったようです。再開時期は未定です。令和5年4月1日以降に出願される商標登録出願については、ファストトラック審査の対象となりません。
なお、「ファストトラック審査サポートツール」については、「商品・役務サポートツール」としてリニューアルされ、商標法第6条(指定商品が不明確等)の拒絶理由を回避するための商品等の調査・確認を支援するツールとして引き続き利用できます。
https://tmfast.jpo.go.jp/tmsupport/top.html
●権利者不明の著作物の二次利用を促進(著作権法改正案)
政府は、権利者が不明の著作物や個人が創作してインターネット上で掲載したデジタルコンテンツの二次利用を促すための著作権法改正案を今国会に提出しました。
https://www.mext.go.jp/content/230308-mxt_hourei-000028109_1.pdf
一般的に他人の著作物を利用する場合、契約により許諾を得る必要がありますが、個人がインターネットに投稿したデジタルコンテンツや権利者が不明な著作物などは、実際に許諾を得ることは困難で、ネット配信や二次利用の妨げになっていると指摘されていました。このため、改正案では、権利者が分からない場合や許諾の意思表示が確認できない著作物について、文化庁長官による登録を受けた「窓口組織」に、利用料相当額の補償金を支払えば、権利者の許諾を得なくても一時的な利用が可能となる新制度を盛り込みました。例えば、個人が創作したデジタル作品で利用を申請する手段がなかったり、1つの作品に複数の著作権者がいるコンテンツなどが想定されます。
一方、著作権者が自身の著作物が利用されていると分かった場合は、申し出れば、補償金を受け取り、改めて利用について交渉できるようにしたり、利用を停止させることも可能とします。
●知的財産侵害品、個人向けの輸入差止が増加(財務省関税局)
財務省関税局は、全国の税関が昨年、輸入を差し止めた偽ブランド品などの知的財産侵害物品は、前年比7.7%増の約88万点に上ったと発表しました。2年連続で前年を上回り、特に個人向けの小口輸入の差止件数が増加しています。
https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2022/index.htm
財務省の発表によると、令和4年の税関における知的財産侵害物品の輸入差止件数は2万6942件で、前年比では4.7%減少したものの、3年連続で2万6千件を超え、高水準で推移しています。これまでは、個人使用が目的であれば、海外の事業者から偽ブランド品を郵送で輸入しても、差止対象になりませんでしたが、昨年10月の改正商標法、改正意匠法、改正関税法の施行により、個人使用の目的でも、海外の事業者が郵送等により日本国内に持ち込む模倣品などは、税関での没収が可能となりました。改正法が施行された令和4年10月から12月の間において、個人使用を目的にした模倣品の輸入差止件数は、8,102件で前年比20.1%増加しています。